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イワン・フョードロヴィッチが帰宅しました。家にはまだ誰もおりません。サリヴァンという名のオス猫が、玄関口の床に座って何か食べていました。
「お前なにを食ってるんだい?」イワン・フョードロヴィッチはオス猫に聞きました。オス猫はイワン・フョードロヴィッチをちょっと見て、それからドアをちょっと見て、それから脇をちょっと見て、なにか見えないものを床からくわえると、また食べ始めました。
イワン・フョードロヴィッチは手を洗おうと、台所へ抜けました。
台所にはケープカという小さな黒い犬が、コンロのうえに寝そべっておりました。イワン・フョードロヴィッチは人を驚かすのが大好きなので、ある種の物事をあべこべにしているのです。オス猫サリヴァンは玄関に寝るように、犬のケープカはコンロの上に寝るようにわざと躾けたのでした。
「どうしたケープカ?横になってるのかい?」手をきれいに洗ってしまって、イヴァン・フョードロヴィッチは言いました。ケープカは一応おすわりをすると、ほほえみの意味をこめて、右の犬歯をむき出しましたとさ。
(1930-1931)